
煎じ薬のメリット
漢方煎じ薬と漢方エキス顆粒の有効成分比較
下の表は漢方薬「桃核承気湯」を用いた研究ですが、煎じ薬とエキス顆粒の成分量の違いに着目しています。
エキス顆粒は製造過程で有効成分が減少している(この場合はグリチルリチン酸、桂皮酸、桂皮アルデヒド)ことがわかります。
1日用量 総抽出量(g) グリチルリチン酸(mg) 桂皮酸(mg) 桂皮アルデヒド
(mg)煎 剤 300.0mL 4.8 44.9 4.79 34.8 製品A 4.5 3.2 21.4 0.92 痕跡量 製品B 4.5 1.4 18.4 0.57 痕跡量 製品C 4.5 2.0 35.5 0.67 0.02 製品D 5.0 1.0 14.4 0.51 0.23 製品E 6.0 1.6 17.0 0.99 0.74
下のグラフは、表の数値から、煎剤(煎じ薬)を1としてそれぞれの成分量の割合を表したものです。

漢方薬を選ぶ時に、煎じ薬を選択することのデメリットとして、1日1回20~30分間の煎じる時間と手間があげられます。反対にエキス顆粒や錠剤は、品質が一定、簡単に服用できるといった手軽さがメリットです。
しかし、お薬の「効能・効果」を最大限に発揮させるためには、生薬のもつ有効成分を効果的に吸収することができる煎じ薬を強くおすすめします。
煎じ薬の魅力、もう一度見直してみませんか?
今の時代、医薬品も“便利さ”が重視される傾向にあります。
「1日1回の服用で済ませたい」「複数の薬をまとめたい」そんな声に応える形で、さまざまな薬が簡便化されてきました。
漢方薬も同様に、エキス顆粒製剤という形で時間や手間をかけずに服用できる商品が主流となっています。
ですが、その手軽さと引き換えに、実は漢方本来の「力」が損なわれている部分もあるのです。

たとえば、私たちがよく知っている「ユズ湯」でおなじみのユズ。
ユズのあの爽やかな香りは、実だけでなく葉や枝など、植物全体に存在する精油成分によるものです。
普段は目に見えず静かに蓄えられているこの精油成分は、葉をちぎったり手のひらでたたいたりするだけで一気に広がります。
そして煎じ薬でも同じように、熱を加えることで香り成分が解き放たれ、体に心地よく作用します。
精油の香りは単なる“良い香り”ではありません。自律神経に作用し、体調を整える「薬効のひとつ」でもあるのです。
煎じ薬には、時間と手間をかけるからこそ得られる価値があります。
煎じている時間そのものが、最高のアロマセラピーになることも。
忙しい日常の中で、ゆっくりと薬草を煎じる時間を大切にしてみてはいかがでしょうか。
その他にも煎じ薬はエキス顆粒よりも優れた効果が得られます。
比較項目 | 煎じ薬 | エキス製剤/錠剤 |
---|---|---|
有効成分 | 煎じた液の「にごり」部分まで飲めるので、生薬の力を余さず取り入れられる | 製造時に成分が失われやすく、煎じ薬の70%または半分ほどの有効成分といわれる |
体内への吸収 | 液体なので胃腸への吸収がよく、効きやすい | 固形(顆粒・錠剤)に加工されているため、吸収はやや劣る |
添加物 | 添加物を使わず自然に近い形で服用できる | 乳糖などの添加物により、アレルギー(乳糖不耐症)を起こすことがある |
香り | 煎じると香りが立ち、アロマのような癒し効果も得られる | 製造中に香り成分(精油)が飛んでしまい、香りの効果は少ない |