認知症と漢方
漢方のEBM

1990年代頃から、EBM(Evidence-Based Medicine=科学的根拠に基づく医療)という考え方が広まり、漢方薬についても「なぜ効くのか」「実際にどのくらい効果があるのか」を科学的に検証する研究が数多く行われるようになりました。
その中には、認知症に伴うさまざまな症状と漢方薬について調べた興味深い研究もあります。
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レビー小体型認知症と抑肝散(よくかんさん)
レビー小体型認知症では、もの忘れなどの認知機能低下だけでなく、実際にはないものが見える「幻視」や、妄想、興奮、イライラ、不眠などの症状が現れることがあります。こうした認知症に伴う行動・心理症状を「BPSD」と呼びます。
抑肝散は、もともと神経のたかぶりやイライラ、不眠などに用いられてきた漢方薬ですが、近年では認知症に伴うBPSDについても研究されています。
レビー小体型認知症の患者さんを対象とした研究では、抑肝散を4週間服用したところ、幻視や妄想などを含むBPSDの評価スコアが治療前より改善したことが報告されています。別のランダム化比較研究でも、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などの患者さんで、抑肝散によるBPSDの改善が検討されています。
ただし、抑肝散そのものが認知症を治す薬というわけではありません。現在研究されているのは、主に認知症に伴う幻視、妄想、興奮、イライラなどの症状に対する働きです。 -
脳血管性認知症と釣藤散(ちょうとうさん)
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が関係して起こる認知症を「脳血管性認知症」といいます。
釣藤散は、本来、中年以降の慢性的な頭痛や、高血圧傾向に伴う頭痛などに用いられる漢方薬ですが、脳血管性認知症についても臨床研究が行われています。
1997年に報告された研究では、脳血管性認知症の患者さん139人を、釣藤散を服用するグループとプラセボを服用するグループに分け、12週間比較しました。
その結果、釣藤散を服用したグループでは、自覚症状、精神症状、日常生活動作などの評価で、プラセボ群より改善がみられたと報告されています。一方、認知機能を評価する長谷川式認知症スケールについては、改善傾向はみられたものの、プラセボ群との明確な統計学的差は確認されませんでした。
つまり、「釣藤散を飲めば認知症そのものが改善する」と単純に考えるのではなく、脳血管性認知症に伴うさまざまな症状や日常生活への影響について研究されている、と理解するのがよいでしょう。
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このように、昔から経験的に使われてきた漢方薬についても、現在では臨床研究によってその働きが少しずつ検証されています。
認知症の治療では、西洋薬と漢方薬のどちらか一方を選ぶということではなく、認知症の種類や症状、その方の体質、現在服用している薬などを考えながら治療法を選択していくことが大切です。
また、漢方薬にも副作用や薬の飲み合わせがあります。特に高齢の方では複数のお薬を服用していることも多いため、認知症に伴う症状に漢方薬を使用する場合は、自己判断ではなく医師や薬剤師に相談しましょう。
















