美肌と髪と漢方

アンチエイジングの漢方

アンチエイジングと六君子湯

六君子湯(りっくんしとう)という漢方薬をご紹介したいと思います。近年、漢方薬についてもさまざまな研究が進められています。六君子湯で特に注目されているのが、食欲に関係するホルモン「グレリン」です。

グレリンは主に胃から分泌され、空腹時に増えて食欲を高めたり、成長ホルモンの分泌に関わったりするホルモンです。六君子湯には、このグレリンの分泌を促したり、グレリンの作用を高めたりする働きが研究されています。

さらに興味深い研究があります。六君子湯を老化モデルのマウスに与えた実験では、グレリンの働きを高めることによって、加齢に伴う心筋や筋肉の萎縮などが抑えられ、生存期間が延びたことが報告されています。記憶や運動機能など、加齢に関係する指標にも変化がみられました。

もちろん、これはマウスを使った研究ですので、「六君子湯を飲めば人が若返る」「寿命が延びる」という意味ではありません。ただ、古くから胃腸の漢方として使われてきた六君子湯が、現代ではグレリンや老化という視点から研究されているのは、とても興味深いところです。

ところで、「空腹」と健康の関係については以前からさまざまな研究があります。カロリー制限と健康寿命については、線虫、ハエ、マウス、サルなど多くの生物で研究されており、そのメカニズムの一つとしてグレリンの働きも注目されています。

そんなグレリンとの関係が研究されている六君子湯。アンチエイジング研究という視点からも、今後の研究が楽しみな漢方薬の一つです。

ちなみに六君子湯には、人参・白朮・茯苓・半夏・陳皮・甘草・生姜・大棗の8種類の生薬が配合されています。本来は、胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすい方に用いられる漢方薬です。

うるうる肌ツヤツヤ髪の漢方薬

髪ツヤツヤの女性

「人は見た目が9割」なんていう本が話題になったこともあります。やっぱり第一印象って大事ですよね。そこで今回は、乾燥肌や髪と漢方についてのお話です。

漢方的な考え方では、肌や髪の状態には「血(けつ)」が深く関係すると考えます。「血」は、全身に栄養や潤いを届けるもの。その血が不足した状態を「血虚(けっきょ)」といいます。

また、漢方には「髪は血余(けつよ)」という言葉があります。「髪は血の余り」という意味で、それだけ髪と「血」には深い関係があると考えられてきました。

血が不足すると、肌の乾燥や顔色の悪さ、冷えなどが現れやすくなり、髪の状態にも影響すると考えます。

そんな「血」を補う代表的な漢方薬が、四物湯(しもつとう)です。

四物湯は、当帰・芍薬・川芎・地黄という4種類の生薬からできています。漢方では、不足した「血」を補い、血の巡りを整える基本的な処方として知られています。

皮膚が乾燥して色つやが悪く、冷え症がある方などに用いられますので、まさに「肌の潤い」が気になる方にも関係の深い漢方です。

ただし、四物湯は胃腸障害のない方に向く処方です。地黄などが入っているため、胃腸が弱い方では胃もたれや食欲低下などが起こる場合があります。

「血虚」の傾向はあるけれど、胃腸が弱い、むくみやめまいもあるという方には、体質によって当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)など、別の漢方が適している場合もあります。

同じ「肌が乾燥する」「髪のツヤが気になる」というお悩みでも、冷えやむくみ、胃腸の状態、生理の状態などによって選ぶ漢方は変わってくるのです。

血が不足した人の肌

<カサカサ肌

寒さの厳しい季節にぴったりの漢方薬をご紹介いたします。

漢方では「血(けつ)」が不足した状態を「血虚(けっきょ)」といいます。血虚になると、冷えや顔色の悪さ、肌の乾燥などが現れやすいと考えられています。

そんな血虚の傾向があり、特に冷えと乾燥が気になる方に用いられる漢方の一つが、温経湯(うんけいとう)です。

温経湯には、当帰・川芎・芍薬・阿膠など「血」に関係する生薬に加え、桂皮や呉茱萸、生姜など身体を温める方向に働く生薬が配合されています。

特に、足腰が冷える一方で手足がほてる、唇が乾燥する、手が荒れるといった症状がある方に用いられるのが特徴です。

そもそも、温経湯の「温経」とは、漢方でいう「経脈を温める」という意味です。身体を温めながら血の巡りを整えていく、という処方の特徴を名前が表しているんですね。

温経湯は、月経不順、月経困難、更年期障害、足腰の冷え、しもやけ、手あれ、湿疹・皮膚炎などにも用いられます。

唇や肌の乾燥だけでなく、冷えや月経にまつわる不調も一緒に気になる女性にとって、選択肢になる漢方薬の一つです。

肌や髪を潤す漢方薬

血と肌の関係

今回は、カサカサした乾燥肌に用いられる四物湯(しもつとう)をご紹介します。

四物湯はその名の通り、4つの生薬で構成されています。

・当帰(トウキ)⇒「血」を補い、巡りを整える
・川芎(センキュウ)⇒「血」の巡りを整える
・芍薬(シャクヤク)⇒「血」を養い、痛みなどにも用いられる
・地黄(ジオウ)⇒「血」を補う代表的な生薬

お察しの通り、すべて「血」に深く関係する生薬です。四物湯は、これら4つの生薬を組み合わせることで、不足した「血」を補い、巡りを整える漢方薬なのです。

漢方では肌や髪と「血」は密接に関係していると考えます。「髪は血余」といわれるように、「血」が十分でなくなると、肌や髪にまで栄養や潤いが行き届きにくくなると考えるわけです。

四物湯は、皮膚が乾燥して色つやが悪く、冷え症などがある方に用いられます。乾燥した肌を漢方で考えるときには、代表的な処方の一つです。

また、乾燥が目立つ皮膚症状に四物湯が応用されることもあります。ただし、四物湯そのものに「アトピー性皮膚炎」という正式な効能があるわけではありません。

アトピー性皮膚炎では、保湿剤によるスキンケアや、必要に応じたステロイド外用薬などによる炎症の治療が基本です。そのうえで、乾燥や冷えなどその方の体質に合わせ、漢方薬を取り入れることがあります。

また、四物湯は胃腸の弱い方には注意が必要です。地黄などを含むため、胃部不快感や食欲不振、腹痛などが現れる場合があります。

肌と水分

冷えからくる乾燥した肌の女性

秋から冬にかけて空気が乾燥する季節。ファンデーションがうまくのらなかったり、肌がひび割れたり、足がカサカサしてかゆくなったり……。肌の健康や美容にとって、乾燥は大敵です。

乾燥肌対策でまず大切なのは、保湿剤などを使って外側から皮膚の水分を逃がさないことです。

一方、漢方では肌の乾燥を「血」や「水」の不足、巡りの乱れなどから考えることがあります。「血」が不足すると、全身に栄養や潤いを届けにくくなり、肌の乾燥や色つやの悪さなどにつながると考えるのです。

そのため、乾燥肌だからといって全員が同じ漢方を飲むわけではありません。

例えば、冷えがあり、皮膚が乾燥して色つやが悪い方には四物湯、冷えとともに手足のほてりや唇の乾燥がある方には温経湯などが選択肢になります。

また、冷えや貧血傾向があり、むくみやめまいなどもみられる場合には、当帰芍薬散が適することもあります。

外側からしっかり保湿することに加えて、漢方では身体の内側にある冷えや「血」「水」の状態にも目を向けるのが特徴です。

乾燥肌だけでなく、冷え、むくみ、生理不順など別のお悩みも一緒にある場合は、それらも漢方選びの大切なヒントになります。

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