不妊と漢方
婦人病の漢方|当帰芍薬散
先日たまたま通った豊明市の三崎水辺公園の桜が素晴らしかったです。もうすっかり春ですね。
「踏青(とうせい)」という言葉がありますが、もともとは中国の春の行事とのこと。春の野に出て青々とした草を踏み、目で草の青さを感じ、足で季節の土や若々しい草の勢いを感じ、鼻で草の香りを楽しむ――そんな春の楽しみ方です。
自然の恵みは、古くから五感を通して私たちに恩恵を与えてくれますね。漢方も、そんな自然の恵みの象徴のように思えます。
さて、今回は女性のお悩みによく用いられる当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)をご紹介します。
当帰芍薬散は、比較的体力が乏しく、冷え症で貧血の傾向があり、疲れやすい方に用いられる代表的な漢方薬です。
さらに、むくみ、めまい、立ちくらみ、頭重、肩こりなどを伴うこともあり、月経不順、月経痛、更年期障害、足腰の冷え症など、女性に多いさまざまな不調に用いられます。
当帰芍薬散という名前の中にある「当帰」。この名前の由来には、実に興味深いお話が伝えられています。
昔むかし、中国に身体が弱く、婦人病に悩んでいた女性がいました。病気のため夫との仲もうまくいかなくなり、悩んだ女性はある薬草を教えてもらいます。
その薬草を飲み続けたところ、次第に元気を取り戻し、以前より美しくなり、やがて夫も妻のもとへ戻ってきた――というお話です。
そこで生まれたとされる言葉が、「夫、当に我がもとに帰るべし」。
この「当に帰る」という言葉から「当帰」という名前が付いた、という説があります。
もちろん、これは当帰の名前の由来について伝えられているいくつかの説の一つです。ただ、このようなお話が残っていること自体、昔から当帰が女性の不調に深く関わる生薬として大切に使われてきたことを感じさせます。
当帰芍薬散には、当帰・芍薬・川芎・茯苓・白朮・沢瀉の6種類の生薬が配合されています。漢方では、不足した「血」を補いながら血の巡りを整え、身体に偏った「水」の巡りも改善する処方と考えられています。
そのため、単に「生理の漢方」というだけではなく、冷え、貧血傾向、むくみ、めまい、疲れやすさなどを伴う女性に適した漢方薬なのです。
また、当帰芍薬散は月経にまつわる不調だけでなく、産前産後の貧血、疲労倦怠、めまい、むくみなどにも用いられます。
冷え症で疲れやすい、むくみやすい、月経不順や月経痛がある――そんな複数のお悩みが重なっている方にとって、当帰芍薬散は代表的な選択肢の一つです。
まさに、昔から女性の身体を支えてきた「婦人病の漢方」の代表格といえる処方ですね。
不妊は女性だけじゃない|男性不妊と漢方
「なかなか妊娠しない」となると、どうしても女性側の身体に目が向きがちです。しかし、不妊の原因は女性側だけにあるとは限りません。男性側の体調や生殖機能が関係していることもあります。
そのため、妊活が長く続いている場合には、女性だけでなく男性も一緒に病院で原因を調べることが大切です。
では、男性不妊に漢方薬が使われることはあるのでしょうか?
実はあります。男性不妊では、体質や症状に合わせて補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などの漢方薬が用いられることがあります。
補中益気湯といえば、胃腸が弱く、食欲がなく、疲れやすい方に使われる「元気を補う漢方」としておなじみですが、男性不妊についても以前から研究されています。
過去の臨床研究では、男性不妊の方に補中益気湯を用い、男性の生殖機能に関係するさまざまな指標への影響が検討されています。また、生殖機能を守る働きについて調べた基礎研究もあります。
ただし、ここは大切なところです。補中益気湯を飲めば、それだけで妊娠につながるという意味ではありません。男性不妊に対する漢方治療については研究報告がありますが、現在のところ十分に強い科学的根拠がそろっているわけではありません。
また、男性不妊には、ホルモンの状態や身体的な原因など、漢方だけでは対応できないものもあります。まず原因を調べ、そのうえで体質や症状に合わせて漢方を取り入れることが大切です。
漢方では、不妊という一つの症状だけを見るのではなく、疲れやすい、胃腸が弱い、冷えがある、足腰がだるい、ストレスが強いなど、その方の身体全体の状態をみながら処方を選びます。
不妊治療というと女性だけが頑張ってしまいがちですが、妊活は夫婦二人で取り組んでいくものです。男性側も一緒に身体の状態を見直してみることが、妊活を考える一つのきっかけになります。
















