健康なからだを作る食べ物
ウナギと山椒
「土用の丑の日」にウナギを食べるという習慣を広めたのは、約200年前、夏に売れないウナギを売る為に平賀源内が考案したという説は有名ですが、夏バテ予防には本当に優れた食材なのです。
ウナギはビタミンA(レチノール)が豊富で、一人前の蒲焼きで大人の一日の必要量の2倍のビタミンAが摂れるといいます。ビタミンAは目の健康を保つために必要な栄養素で、不足すると夜盲症を引き起こしたりします。また、眼精疲労、ドライアイを防ぐ効果もあります。
また、粘膜や肌の調子を整える作用もあり、老化防止も期待できます。その他にもウナギには、ビタミンB1、B2、D、E、亜鉛、カルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄分、たんぱく質や脂質なども豊富。
これだけ豊富な栄養素を含むウナギですが、ビタミンCは含まれていないため、ビタミンCの豊富な食材と一緒に摂るとバランスがよいですよ。
そして、ウナギの蒲焼きに添える粉ざんしょうや山椒の実には、ウナギの味を独特の香りで引き立てるという役割と、ウナギの脂肪の酸化を防いだり、消化を助ける薬効があります。漢方では、冷えによる腹痛、下痢、食用不振、回虫駆除に用いられます。
サツマイモは皮ごと
蒸したり焼いたりすると甘みが増して美味しくなるサツマイモ。これはサツマイモに含まれるでんぷんが、β-アミラーゼという酵素によって糖化されるためなんです。
サツマイモを食べると胸やけが起こることがありませんか?これはその甘みが胃粘膜を刺激して胃酸の分泌を多くすることと、酸が異常発酵して食道に刺激を与えるからと考えられています。
いずれにしても、胸やけの正体は糖質の異常発酵。対策は、皮に含まれているミネラルがガスの発生を抑えてくれるので、サツマイモは皮ごと食べると良いです。
トマトの効能
トマトには、リコピンやβ-カロテンなどのカロテノイドが豊富です。また、ビタミンCやビタミンEなども含みます。これらには抗酸化作用があり、老化やガンの抑制、動脈硬化の予防に役立ち、紫外線の害からも体を守ってくれます。
ミニトマトの方が栄養価が高く、リコピン、β-カロテン、ビタミンCを多く含みます。
そして、トマトはグルタミン酸が豊富。グルタミン酸は加熱で増加するので「だし」として使うと減塩に役立ちます。夏が旬というだけあって、トマトには体を冷やす作用もありますので、微熱、のぼせ、ほてりなどの改善や熱中症予防にも役立ちます。積極的に摂り入れたいですね。
梅のお話
ジメジメとした梅雨。梅雨の語源は諸説ありますが、「梅の実が熟す時期の雨」というものも有名なようです。というわけで、今回は「梅」のお話です。
梅干しには殺菌作用があり、口内炎に効果があるといわれています。また、クエン酸による疲労回復、食欲増進、カルシウム、鉄分の吸収率のアップなどがあります。
生薬としてのウメは、烏梅(うばい)と言います。烏梅は、未熟果実の燻製で、教科書的な効能としては解熱・風邪・頭痛・下痢・食あたり・胃腸障害・咳嗽など。
そして、梅エキスが凄いのです!梅エキスには、トリテルペノイドの中のオレアノール酸・ウルソール酸・ベツリン酸が含まれています。これらは抗がん作用、抗炎症作用、抗酸化作用、抗高脂血症作用などの生理作用を持っています。
ウルソール酸については、がん細胞が増殖分裂する際必要な脂肪酸酵素の働きを抑えて、骨格筋と褐色脂肪細胞をを増加させ、食事による肥満や糖尿病、脂肪肝を減少させる働きが報告されています。梅エキスの成分を実際にがん治療の補助に使用している例もあります。
また、ムメフラールを含むことから、毛細血管の血流を改善し、動脈硬化や高血圧を予防する効果が期待されます。
温故知新、身近な食材でも改めて昔の叡知を感じますね。
タイサン
タイサン(大蒜)という名前の生薬があります。身近な食材なのですが、これはなんでしょうか?
答えはニンニクです。今回は、ニンニクに含まれる主な成分とその働きをご紹介します。
- スコルニジン
硫黄化合物のひとつです。糖質をエネルギーに変える代謝の際に必要なビタミンB1の働きを高めると共に、血液中のコレステロール量を調整し、動脈硬化予防につながる作用があるといわれています。 - アリシン
生ニンニクの成分のアリインが分解されて変化する成分。疲労回復を助け、血糖値の上昇を抑え、血流を改善する効果があり、生活習慣病全体に効果があります。ニンニクが持つ食欲を高める効果もこのアリシンによるもの。 - スルフィド類
ニンニクの匂い成分のアリシンが変化したもの。結合しているイオウ分子の数により何種類かのスルフィド類があるが、ジアリルジスルフィドという成分は発がん性物質を無毒化することでがんの発生を抑えます。
ニンニクの生薬「タイサン」を配合した漢方薬の取扱いはございませんが、ニンニクを熟成発酵させた「熟成発酵黒にんにく」の取り扱いはございます。
ニンニクのさらにさらに上を行く効能は、またの機会にご説明いたします。
ナスの効能
食欲の秋に話題となる『秋ナスは嫁に食わすな』
この語源は諸説あるそうで…
- 『秋ナスはおいしいから嫁になんかもったいない』という説。
- 1とは反対に『秋ナスはからだを冷やすから、また、種が少ないから子宝に恵まれなくなる』という、嫁をいたわる説。
ちなみに東洋医学の世界では、ナスはからだを冷やすたべものに分類されるので、冷えには良くないかもしれません。
ただ、そんなナス。イボにも効果があるんです。伝承ではありますが、イボができたらナスのヘタでこすると治りやすいんです。一度試してみようと思います。
バナナの効能
その昔、特権階級限定で使用されていたスパイスはなんでしょうか?
答えは「ショウガ」。生のショウガを「生姜(ショウキョウ)」 、蒸して乾燥させたものを「乾姜(カンキョウ)」、そのまま乾燥させたものを「乾生姜(カンショウキョウ)」といいます。
生姜(ショウキョウ)は多くの漢方薬に含まれています。効能は身体を温め、胃腸を助け、食欲を更新させます。しょうが湯でも有名ですが、風邪のときにも有効です。風邪の漢方の桂枝湯や葛根湯、アトピーなどに使われる黄耆建中湯などに含有されています。
ところで、バナナは南国フルーツの代名詞と言われていますが、なんと、植物分類上は「草」に属するのです。しかも、分類上はショウガとおなじ、ショウガ目、ウコン、ミョウガともお仲間なのです。ちなみにバナナの効能は「下痢を治す」。含有されているオリゴ糖が腸内環境を整えるそうです。生姜とは少し違ってますね。
五味
東洋医学では五味(ごみ)という考えがあり、食材も薬と同様に考えられており、この考え方で未病を改善し、病気になりにくい体を作ることが大事だと考えられています。
酸味、苦味、甘味、辛味、かん味(塩辛い)それぞれの味は各五臓の働きと関連しています。それぞれの食材と作用です。
- 酸味⇒やわらかいものを固めたり漏れ出るものを止める収斂作用。(レモン・梅・ヨーグルト)
- 苦味⇒火の勢いを鎮める働きがあり熱による咳や胃痛を緩和します。余分な水を取り除く作用もある(フキ・ニガウリ)
- 甘味⇒胃腸の働きを整える。気や血を補い、腹痛やけいれんなどの急な症状を抑える(米・りんご・牛肉・キャベツ・アジ)
- 辛味⇒気や血のめぐりをよくして、発汗を促し、痛みをとる(ニンニク・ネギ・ショウガ)
- かん味(塩辛い)⇒乾燥を潤す、固まったものを柔らかくする(コンブ・クラゲ・ハマグリ)
食材の作用を意識した食事をすることにより病気になりにくい身体を作ることができます。
冷え性と漢方
漢方の考え方で冷えという概念がありますが、漢方で考えなくても冷えが体に悪いということはご存知ですよね。生薬と同様に食材にも体を温めるもの、冷やすものがありますのでご紹介します。
- 寒性 体を冷やす作用⇒ バナナ、トマト、ヒジキ、鮭
- 涼性 体をやや冷やす⇒ ミカン、レタス、小麦、豆腐
- 平性 どちらでもない⇒ サツマイモ、豚肉、牛乳、キャベツ
- 温性 体をやや温める⇒ リンゴ、かぼちゃ、牛肉、鶏肉
- 熱性 体を温める ⇒ コショウ、山椒、とうがらし
よく子どもが下痢のときに、オレンジジュースはダメ、リンゴジュースは〇と言いますが、体を冷やすのと温めるとの違いなのですね。