二日酔いと漢方
"酔い"によく効く漢方薬
今日はフレッシュな薬学生の漢保 煎二(かんぽう せんじ)くんといっしょに普段の会話から、漢方煎じ薬の勉強を進めていきたいと思います。
煎二くん「森先生、昨日、日進市の花火大会で、飲みすぎちゃいましたよ〜。気持ち悪い…おぇ〜…二日酔いに効く漢方ってなにかありませんか?」
森「そうか、お祭りだったんだね。でも、いくら楽しくても実習の前の日に飲みすぎてはいけないよ。勉強に支障がでるからね。
でも煎二くん、とってもいい漢方薬があるよ。五苓散(ごれいさん)っていうんだ。
お酒を飲むとアルコールが分解されてアセトアルデヒドという物質がでてくるのは知ってるよね?
このアセトアルデヒドが吐き気や頭痛などと言った二日酔いの原因になるんだ。
でも、この五苓散という漢方薬を飲むと二日酔いの原因のアセトアルデヒドを尿として体外へ出してくれるのを助けてくれるんだ。しかも、多くの漢方薬はゆっくり効果を発揮するのに対し、五苓散の二日酔いに対する作用は即効性がある。二日酔いを改善するのに数週間も待てないよね(笑) それに、二日酔いだけではなく、乗りもの酔いにも効果があるんだ。」
煎二くん「乗りもの酔いにも効果があるんですね!でも、気持ち悪くなる原因は違いますよね?なのに効くんですか?」
森「そうなんだ、乗りもの酔いは耳の内耳という部分の三半規管や前庭という場所が乗り物に揺られることで、自律神経や平衡感覚を乱して次第に気分を悪くして吐き気や嘔吐という症状が出てくる。同じ"酔い"でも、お酒に酔ったときはアルコールで脳の働きが狂って起こり、お酒を飲んでしばらくしたときの"二日酔い"は、アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドのせいで起こり、乗りもの酔いについては自律神経系の乱れで起こるわけだから、原因は違うよね。ただ、乗りもの酔いを起こす人はベースに水滞傾向にある人だということがわかっているんだ。」
煎二くん「水滞って、なんですか?」
森「水滞は、水が滞ること。水は血液以外の身体の中の水分のことで、身体の中で本来適切な場所にあって、流れていかないといけない水分が停滞しているって意味なんだよ。それを五苓散が改善し正常にすることで、乗りもの酔いも予防できるってわけなんだ。」
煎二くん「そうなんですね、わかりました。では、早速飲ませていただきます!」
五苓散は即効性の期待できる漢方薬です。二日酔いや乗りもの酔いでお悩みの方はぜひ一度お試しいただけたらと思います。
アルコールと納豆
アルコールを飲んで起こる不快な症状は「悪酔い」や「二日酔い」があります。さて、悪酔いとはどういった症状をいうのでしょう?
悪酔いとは血中アルコール濃度が高い時間に起こる不快な症状で、顔が真っ赤になる、動悸・頭痛、吐き気などが起こります。これらは肝臓でアルコールが分解される時にできるアセトアルデヒドという非常に毒性の強い物質を分解する酵素の少ない人に起こりやすいといわれています。
悪酔いを予防におすすめなのは「納豆」です。納豆は豊富なアミノ酸が肝臓の機能を高め、アルコールの代謝を促進し、特有の粘り気が胃粘膜を保護し、翌日に起こりやすい胃のただれや不快感を防いでくれます。
ちなみに「二日酔い」「悪酔い」予防にお勧めしたい漢方薬は五苓散。 これは利尿作用、血圧を下げる作用、アルコール代謝改善作用、消化管運動亢進作用などが期待でき、食前に飲むと効果的です。お医者さんも二日酔い予防によく使っていることで有名な漢方薬なんですよ。
二日酔いには五苓散
キンキンに冷えたビールが美味しい!そんな季節にもってこいの、二日酔いによく効く、五苓散をご紹介です。
ビールや焼酎水割り、ウイスキーのロックなどの冷たいお酒を大量に飲んだ翌日に二日酔いになったご経験がある方は多いのではないでしょうか。さあ、その時の胃腸はどのようになっているのでしょうか。
冷たいお酒のおかげで、胃腸もキンキンに冷えています。そのために、胃も腸も機能が弱り、消化管の吸収能力が著しく下がっています。
皆さんは二日酔いを解消しようと水を飲みますよね。水が吸収され、尿と一緒にアルコール分が排出されれば、二日酔いが覚めるはずという理屈なのですが、消化管が言うことを聞かない状況ですので当然、改善しない…胃はチャプチャプしているのに、喉は渇いて、尿が出ない。ということになるのです。むくんで顔は腫れぼったいという状況下であったとしても、実は体内では胃腸が弱っているせいでそれほど水が過剰というわけではなということなのです。
そこで利水剤の「五苓散」の登場です。
この五苓散を投与すると、水が消化管から吸われて、それと共に尿が出るようになって、二日酔いがスーっと楽になるのです。「利」という文字は「スーッと通すという意味があるのです。
ところで、西洋薬にも利尿薬というものがありますよね。その違いを簡単に説明しますと…
西洋薬の利尿剤は、むくみがあろうとなかろうと問答無用で尿量を増やします。一方、利水剤である「五苓散」はむくみがあるときには尿量を増量させますが、脱水のときには、なんと渇いた組織へ水を分配させるのです。身体の状態に応じて細やかに調整してくれる作用が漢方薬にはあるんですね。お見事、五苓散!!
ウコンの功罪
「飲酒の前にウコンエキスを飲むと肝臓にいいらしい。二日酔いしないらしい。」 こんなイメージ定着していませんか?実はウコンにはある条件が一致すると、肝臓に悪い影響を与えるようです。
ウコンは胆のうに作用して、胆のう収縮作用や胆汁分泌促進作用があり、これにより消化不良が改善するという科学的データがあるのですが、胆道閉そく症や胆石の人などは要注意!胆管が詰まっていたり、狭くなると胆汁分泌作用が促進されることで痛みが発生し、症状を悪化させる場合もあります。
それならば、二日酔いに効く漢方はないの?
あります。『五苓散』です。
五苓散には、
・茯苓(ぶくりょう)
・蒼朮(そうじゅつ)
・沢瀉(たくしゃ)
・桂皮(けいひ)
が含まれています。
これらにはアルコールの代謝を改善させる作用、利尿作用(尿をたくさん出させる作用)、消化管の運動亢進作用などが動物実験などで確認されています。また、桂皮(けいひ)は身体をあたため血行を良くし、頭痛やめまいにも効果的なのです。ぜひ、お試しください!
二日酔い
二日酔いとは、飲んだお酒の量が、肝臓の代謝能力を上回って代謝過程で発生する毒性のアセトアルデヒドが体内に蓄積される状態で、症状としては、頭痛や嘔吐、むくみや口の渇きなどです。
漢方では、二日酔いによるこれらの症状は「水が滞って生じている」と考えます。そして、その水の滞りに対し、五苓散を使用します。
五苓散の薬理作用として、動物を用いた研究では、アルコール代謝改善作用、利尿作用、消化管運動促進作用が報告されています。 ぜひお試しください。