不定愁訴と漢方
ジメジメした季節には
季節の変わり目などに体調を崩される方は多いですが、特に梅雨時期に体調を崩す方のご相談は多くあります。理由は一つではありませんが、長雨による湿度の上昇や気圧の変化などが関係していると考えられています。
「雨の日になると身体が重だるい」「頭が痛い」「めまいがする」「胃腸の調子が悪い」など、梅雨になると決まって不調が出る方もいらっしゃいます。
漢方では、こうした梅雨時期の不調を考えるときに、身体の中の「水」の巡りに注目します。必要な水分が身体の中をうまく巡らず、一部に偏っている状態を「水滞(すいたい)」や「水毒(すいどく)」と呼びます。
「水」の巡りが悪くなると、身体の重だるさ、むくみ、頭痛、めまい、吐き気、下痢など、さまざまな症状として現れると漢方では考えます。特に、もともと胃腸が弱い方では、梅雨時期になると食欲が落ちたり、お腹の調子を崩したりすることもあります。
そこで、この時期によく使われる漢方を2つご紹介します。
まずは五苓散(ごれいさん)です。
五苓散は、身体の中で偏っている水分バランスを整える代表的な「利水剤」です。のどが渇いて尿量が少なく、頭痛、むくみ、吐き気などがある場合に用いられます。
「余分な水分を出す漢方」と説明されることもありますが、単純に尿をたくさん出すことを目的とした薬ではなく、身体の水分の偏りを整えるというのが五苓散の特徴です。
頭痛やむくみ、吐き気、下痢など、比較的急に起こった「水」の偏りによる症状に使われることも多く、二日酔いや気圧の変化に伴う不調に用いられることでも知られています。
お次は苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)です。
苓桂朮甘湯は、茯苓・桂皮・白朮・甘草という4種類の生薬からなる漢方薬で、めまい、立ちくらみ、頭重、動悸などに用いられます。
実は、めまいと苓桂朮甘湯について興味深い臨床データがあります。ある耳鼻咽喉科で苓桂朮甘湯を処方されためまい患者138例を調べたところ、99例で有効と判断され、有効率は72%だったと報告されています。
さらに、その報告では、効果を感じた方のほとんどが服用開始から2週間以内に変化を自覚していました。ただし、これはプラセボと比較した試験ではなく、一つの医療機関での臨床データですので、「めまいの72%に必ず効く」という意味ではありません。
苓桂朮甘湯は特に、立ち上がったときにクラッとする、ふらつく、めまいと一緒に動悸がするといった方に用いられることがあります。
同じ「梅雨のめまい」でも、むくみや頭痛、吐き気など「水」の偏りが強い方には五苓散、立ちくらみや動悸を伴う方には苓桂朮甘湯など、症状によって選ぶ漢方は変わってきます。
動悸・息切れ
運動もしていないのに胸がドキドキする、脈が速い、リズムが乱れるなど、自分の拍動を不快に感じることがありませんか?これらを「動悸」といいます。
ひと口に動悸といっても、緊張や興奮によって一時的に起こるものもあれば、不整脈をはじめとする心臓の病気が原因になっていることもあります。
ほかにも、貧血、脱水、薬の影響、甲状腺機能亢進症、肺の病気など、さまざまな原因が考えられます。動悸や息切れが繰り返し起こる場合には、まず原因を確認することが大切です。
一方、検査をしても大きな異常が見つからず、精神的な緊張やストレス、更年期などに伴って動悸を感じる場合には、体質や症状によって漢方薬が用いられることがあります。
漢方では、少し動いただけで息切れがする、疲れやすい、声に力がないといった場合には、身体を動かすエネルギーである「気」が不足した「気虚(ききょ)」の状態を考えます。
また、「水」の巡りが悪く、めまいや立ちくらみと一緒に動悸が起こる場合もあります。このようなタイプで用いられる代表的な漢方の一つが、苓桂朮甘湯です。
苓桂朮甘湯は、立ちくらみ、頭重、めまいに加えて動悸を伴う方に用いられる漢方薬です。
ただし、「心臓に異常がないから大丈夫」と動悸を放置するのもおすすめできません。ストレスや不安が強くなって症状が悪化することもありますし、検査のタイミングによっては不整脈が確認できないこともあります。
胸の強い痛み、呼吸が苦しい、意識が遠のく、冷や汗が出るなどの症状を伴う場合には、漢方で様子をみず、速やかに医療機関を受診してください。
台風と気圧
今日は全国的に天気が悪く、2つの台風に見舞われるという何ともいえない1日です。薬局の外からは学校が休みになって元気に自転車で駆け回る子どもたちの姿も見えます。危ないぞ!頼むから家でジッとしていてくれ!という大人の声も、この大きな風音ではかき消されそうですね。
さて、本題です。
台風が近づいているときや雨の前になると、身体の不調を訴える方がいらっしゃいます。具体的には、「頭痛」「めまい」「身体のだるさ」「腰や関節の痛み」などです。
最近では、このように天候や気圧の変化によって起こる体調不良を「気象病」や「天気痛」と呼ぶことがあります。
特に注目されているのが、耳の奥にある「内耳」です。内耳は身体の平衡感覚を保つだけでなく、気圧の変化を感じ取ることにも関係していると考えられています。
台風や低気圧が近づいて気圧が変化すると、その刺激を敏感に感じる方では自律神経のバランスに影響し、頭痛やめまい、だるさ、痛みなどが現れることがあります。
漢方では、このような天候による不調の中でも、頭痛やめまい、むくみ、吐き気などがある場合には、身体の「水」の巡りが乱れた「水滞」という状態を考えます。
そこで使われる代表的な漢方が、先ほどご紹介した五苓散です。
特に、「雨が降る前になると頭が痛い」「台風が近づくと頭痛やめまいがする」「天気が悪い日は身体がむくんで重い」といった方では、体質や症状によって五苓散が選択肢になることがあります。
一方で、めまいやふらつきに加えて立ちくらみや動悸がある場合には、苓桂朮甘湯などが適することもあります。
同じ「台風の日に調子が悪い」という症状でも、人によって頭痛が中心だったり、めまいだったり、むくみだったりと症状はさまざまです。漢方では、天気だけで薬を決めるのではなく、そのとき身体にどんな症状が起こっているのかをみながら処方を選ぶことが大切です。
















