頭痛と漢方
夏の頭痛
夏に冷房の効いた部屋に1日中ずっといることは体調を崩す原因になります。手足が冷え切ったり、お腹が冷えたり、頭痛やめまいが起こったりします。おまけにこの季節はアイスコーヒーやアイスティ、アイスクリームにかき氷など、お腹を冷やすお楽しみがてんこ盛りです。
知らず知らずのうちに、私たちの胃腸を徹底的に冷やし、体調を悪くさせているのです。特に胃が冷えることで起こる症状のひとつに、片頭痛があります。胃が冷えると、胃の近くにある肝が冷えます。肝が冷えると、頭頂から側頭部を巡る神経に影響が伝播し、頭痛が発生するのです。
そこで、今回おすすめの漢方薬は呉茱萸湯(ゴシュユトウ)です。この「呉茱萸湯」、配合されているゴシュユとショウキョウという生薬が胃を温めます。また、呉茱萸は気の逆流を抑える為に片頭痛に伴って生じる吐き気も抑制し、おまけに肝もあたためてくれます。
冷えたことで起こる消化機能の低下は、人参、ショウキョウ、大棗が胃腸の機能を高めて消化機能を助けてくれます。また、呉茱萸は、水代謝も改善し、水はけをよくすることで、頭痛に対して優れた効果を発揮します。
一般的に煎じ薬は温かい状態で服用しますが、今回の呉茱萸湯は違います。頭痛・胸やけがひどい場合については、冷まして服用するのもありです。ただし、胃腸は冷やしすぎないことが重要です。
低気圧で起こる頭痛
夏が終わる頃は、台風も次々と発生し、秋雨前線の影響で雨の多いお天気が続きます。この時期によくご相談を受けるのが、頭痛にお悩みの方です。
「低気圧で頭痛が起きる」、よく耳にする言葉です。雨降りなど湿度の高い環境にいると、汗がうまく出せず、余分な水分を出して体内の水をコントロールすることがうまくいかなくなり、頭痛を引き起こすというのが原因のひとつといわれています。
身体の不調をもたらす湿気を、東洋医学では「湿邪」といいます。
体内に湿邪がたまるのは、もともと胃腸の弱い方に多くみられるようで、飲んだ水が胃の中でチャプチャプと鳴ることも。不調は頭痛だけでなく、頭重、めまい、悪心、吐き気などの症状が表れやすくなります。
こういった頭痛は、西洋医学では対症療法しかありませんが、漢方では身体の中の「水」の巡りを改善し、余分な水分を排出させることで、気圧や湿度の変化による頭痛が起こらないよう導きます。代表的なのは五苓散(ごれいさん)。利尿作用のある4つの生薬「沢瀉、茯苓、猪苓、白朮」が使われており、水分の循環を良くして無駄な水分を排出するだけでなく、偏った水分バランスを整える作用もあります。
「虚実」の「証(しょう)」も「虚実間証(きょじつかんしょう)」を中心に比較的広く用いられるお薬のため、体質をあまり選ばず、多くの方に飲んでいただける漢方薬です。「五苓散は雨の前に悪化する頭痛の約90%に有効である。」といった論文もあるほどです。